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獣医師のお仕事

   Veterinary work

幅広い職域で多岐にわたる活動

 
 獣医師というと、犬や猫などのお医者さんや、牛や馬などのお医者さんというイメージをもたれるのが一般的ですが、実際には幅広い職域で多岐にわたる活動を行っています。主な活動をあげても、獣医師がいかに幅広い職域で、様々な活動を行っているのをうかがえます。
 
グループ1:動物の診療を通じて、動物の健康を保ち続けることに貢献するグループ(全体の50%)
 1−1 産業動物診療   11.0%
 1−2 小動物診療  39.0%
グループ2:公務員として畜産の発展、公衆衛生の向上、動物愛護の普及に貢献するグループ(全体の24%) 
 2−1 家畜衛生   8.8%
 2−2 公衆衛生分野  14.1% 
 2−3 動物愛護関係  1.3% 
グループ3:人と動物が共生する豊かな生活を支えるため、社会経済活動、地球環境保全に貢献するグループ
 3  獣医学教育と研究    14%
 4  学校飼育動物
 5  動物介在活動
 6  野生動物対策、動物園動物診療  
 7  バイオメディカル  
 8  海外技術協力  

 
「動物愛護関係」および「野生動物対策、動物園動物診療」で、全体の1.3%
「教育関連業務」、「バイオメディカル」ならびに「海外技術協力」をあわせて、全体の14%
 
獣医事をめぐる情勢 農林水産省・安全局 畜水産安全管理課より

1−1 牛・豚・鶏・馬などの産業動物の診療

 
 産業動物診療は、家畜の健康を守ることにより、人の食の安全をも守っている、とても大切な仕事です。下記のような様々な仕事を通じて、安全で栄養豊かな畜産物の生産をサポートしています。家畜の誕生から、食品として送り出すまでの長い期間にわたって、農家や産業動物を支え、さらには人の食の安全をも守る「縁の下の力持ち」なのがこの仕事です。

  • 家畜(牛、馬、鶏等)の病気の予防と診療 
  • 畜産農家の指導(飼養管理・経営指導等) 
  • 家畜の改良・増殖(人工授精・受精卵移植等) 
  • 家畜の病気に関する試験・研究 
  • 魚病対応(水産分野との連携・協力)
 

牛の繁殖検診(農林水産省ホームページより)

1−2 犬・猫・小鳥などの小動物診療

 
 小動物診療は、家族の一員であるペットの健康を支える仕事をしています。犬や猫、小鳥やウサギなどのペットの診療だけでなく、健康診断やしつけ、栄養相談など指導も大切な仕事です。最近は、専門病院が増加しています。皮膚科、腫瘍科、眼科などの専門とした病院や、鳥、エキゾチックアニマル、猫などの動物種ごとの病院も多くなってきました。また、CTMRIなどの高度医療を行っている動物病院もあります。動物と人が共に感染する人と動物の共通感染症の予防も重要な仕事の1つです。

  • 犬・猫・小鳥などの家庭動物の診療
  • 健康診断やしつけ、栄養相談などの指導
  • 専門病院の増加
  • 人と動物の共通感染症の予防
 

イヌの画像診断の様子
(写真:(公社)日本獣医師会)

2−1 家畜衛生

 
 家畜衛生は、家畜の伝染病を防止することにより、畜産の発展、食の安定供給を守っている重要なお仕事です。定期的な検査や伝染病が出たときに素早い対応を行うことにより、速やかに伝染病の流行を押さえ込み、国内に広がるのを防いでいます。特に、口蹄疫、BSE、鳥インフルエンザ、豚熱に代表される病気の時に、これらの防疫システムはかなり有効です。国際的にも高い評価を得ている、とても優れた防疫体制を維持するのも獣医師の大切な仕事です。
 また、水際で家畜の病気の侵入を食い止める動物検疫も大切な仕事です。生きた家畜のみでなく、骨・肉、皮毛類などの畜産物、人工授精に用いる精液などの検査も行い、感染症の侵入を防いでいます。

  • 国内での家畜の病気を防止することにより、畜産を守る
  • 水際で家畜の病気の侵入を食い止める
 

動物検疫所で検疫に従事(写真:動物検疫所)農林水産省ホームページより

2−2 公衆衛生

 
 公衆衛生は、食品や生活環境の衛生、感染症予防を通じて、安全な国民生活に貢献するお仕事です。牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類は、肉になる段階で獣医師による厳重な検査が行われています。卵や乳製品などが正しく作られているか、販売しているのかなども監視し、私たちの食の安全を守っています。また、動物と人が共通して感染する人獣共通感染症のなかでも、もっとも恐ろしい病気のひとつである狂犬病の予防も重要な仕事です。
 このように、人の健康に密接にかかわる仕事に取り組み、私たちの生活をささえています。

  • と畜検査・食鳥検査(食肉等の安全性の確保)
  • 人獣共通感染症(狂犬病等)の予防
  • 食品衛生監視・指導(食品の安全性の確保)
  • 環境衛生監視・指導(生活環境の保全)
  • 人獣共通感染症、食品衛生、環境衛生に関する試験・研究

2−3 動物愛護

 
 動物たちに親しみ、動物たちを愛するという行為を通して「いのち」の大切さ、かけがえのなさを感じ取って欲しいという動物愛護の考えを広げる活動や家庭飼育動物との正しい付き合い方などの指導などを行っています。

  • 動物愛護思想の啓もう・普及
  • 家庭動物の飼い方相談

3 獣医学教育と研究

 
 大学や研究機関などで、獣医学に関する調査研究を行うとともに、獣医学生を教育します。また、それらの研究の成果は学術集会や学会などで発表され、獣医学の進歩や普及に貢献しています。

  • 獣医学に関する調査研究
  • 学術集会や学会での発表
  • 獣医学生を教育し、後継者を育てる

4 学校飼育動物支援活動

 
 動物の飼育体験を通じて子供たちに豊かな心を育てる学校飼育動物支援活動を行います。

  • 学校飼育動物の衛生管理および健康管理
  • 適正飼育の指導
  • ふれあい教室の実施

ふれあい教室
(公社)愛知県獣医師会 学校動物飼育支援委員会

5 動物介在活動

 
福祉施設訪問などの活動を通して、人々の心の健康を支えます。

  • 老人ホーム、養護施設や幼稚園への動物たちの訪問活動
  • 動物とのふれあい活動
  • 医師と協力しての動物介在療法
  • 社会福祉活動

6 野生動物対策・動物園動物診療

 
 野生動物の保護・管理を通じて、環境を保護します。
 近年、野生動物の色々な問題がニュースで流れています。有害鳥獣による農作物の被害や、人の生活圏にクマなどの野生生物の出現、様々な外来生物による問題、動物たちの生息域である里山や湿原、干潟の保全対策および生物多様性の保全など。これらは、動物のプロである獣医師の持つ知識や技術が生かされています。
 また、動物園や水族館の動物たちを診療する獣医師たちもいます。写真はゾウの内視鏡検査の写真です。また、診療だけでなく、稀少動物の保護活動や繁殖活動などにも取り組んでいます。

  • 野生動物の保護と管理
  • 生物多様性の保全
  • 動物園動物の診療
  • 稀少動物の人工繁殖と野生復帰

 

ゾウの内視鏡検査。東京・上野動物園にて(写真提供:日本動物園水族館協会) 農林水産省ホームページより

7 バイオメディカル

 
医師と協力して実験動物を管理し、医薬品の開発などを通じて、人の医学に貢献します。

  • 動物用・人体用医薬品の開発
  • 動物用・人体用医薬品の安全性の確保
  • 医学における実験動物管理

8 海外技術協力

 
 発展途上国での家畜衛生、公衆衛生などの発展に協力し、現地の人々の生活の向上に貢献します。

  • 海外技術協力
  • 海外技術交流

  このように、獣医師は一般に知られているような動物の診療だけでなく、幅広い活動を通じて、動物、さらには人の健康にも大きくかかわっていて、かけがえのない地球上に息づくすべての動物の「いのち」をその活動の対象にしていると言えます。