代表的な人獣共通感染症

Typical zoonosis

重症熱性血小板減少症候群

  Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS

 

 
出典:国立感染症研究所

  
 SFTSは、主にマダニ(フタトゲチマダニ)が媒介し、感染する。日本では、西日本を中心として報告が上がっており、特に九州、四国、中国地方で、人・犬・猫の発生が増加傾向にある。また、人と猫に対する感受性が高く、感染によって重症化する傾向にある。治療法が確立されておらず、対症療法が中心となるため、徹底した予防が重要である。

疫学・病原体

 
 SFTSは、新しいウイルスによるダニ媒介性感染症のひとつであり、2018年の国際ウイルス分類委員会において、ブニヤウイルス目(Bunyavirales)フェニュイウイルス科(Phenuiviridae)バンヤンウイルス属(Banyangvirus)ファイヤンシャン・バンヤンウイルス(Huaiyangshan banyangvirus)と命名されたが、日本国内ではSFTSウイルスとして広く知られていることから、ここでは旧名称で記載する。
 SFTSウイルスは、経卵性伝搬で成ダニから幼ダニへ受け継がれる経路(マダニ-マダニ経路)とマダニが哺乳動物を吸血する際に感染させ、さらに感染哺乳動物を吸血することによりウイルスを獲得する経路(マダニ-哺乳動物経路)により、自然界で維持されている。人、犬、猫(チーターを含む)以外の発症動物は確認されていないが、野生動物ではイノシシ、シカ、アライグマなどの感染が確認されている。
 SFTSは、2013年に感染症法で全数把握の4類感染症に加えられており、国内において、20205月までに届出られた患者報告数は517例であり、その発生は毎年510月に多く、主な媒介動物であるマダニの活動時期と重なるとされている。また、SFTS患者のおける致命率(致死率)は27%と高く、有意な経年的変化が認められなかったとの報告や、致死率6.330%との報告もある。
 国内においては、2016年にSFTSが強く疑われる猫に咬まれた人が、数日後にSFTSで死亡したことが厚生労働省から発表されている。また、2017年に初めて、徳島県の犬でのSFTS発症が報告されている。その飼い主も似たような症状を示しており、その後の検査でSFTSウイルスに感染していたことが明らかになり、不明な点が多いながらも、犬から人への感染が生じたと判断された、との報告がある。
 

動物における本病の特徴

 
 上記した人に準ずる症状を示すが、黄疸や異型リンパ球の出現などが認められることがある。
 確定診診断にはウイルス学的な検査が必要となり、その検査方法等、技術的な内容の主な相談先は、国立感染症研究所となる。(尚、SFTSウイルスの検査受諾可能な民間検査機関もある。)
 治療開始前の血液サンプル(血清)が診断に役立つ。採取した血清は、冷蔵保存が望ましい。SFTSが疑われる症例の血液サンプルの取り扱いには、十分い注意する必要がある。
 現在、犬や猫におけるSFTSウイルスに対する治療薬はなく、対症療法が主たる治療となる。
 

人における本病の特徴

  
 人がSFTSウイルスに感染すると、614日間の潜伏期間を経て、発熱や食欲の低下、消化器症状(嘔吐、下痢等)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、失語など)、リンパ節腫脹、出血症状(皮下出血や、血など)を起こす。
 血液検査所見上は、白血球減少、血小板減少、ASTALTLDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがある。
 

人における法律関係

 
 重症熱性血小板減少症候群は、感染症法(四類感染症)に指定されており、病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスに限り、診断した医師による届出が必要となる。
 

予防・感染防御

  

  • 感染リスクの軽減を目的とするマダニの寄生予防
    人 :自然環境では、長袖や長ズボンの着用など肌の露出を避ける
    動物:ノミ・マダニ予防薬の定期的な投与
  • マダニに直接触れない
  • 野生動物との接触時には、十分に気を付ける。
  • SFTS感染疑いがある動物の診療または、看護に際しては、マスク、グローブ、ガウン、ゴーグル等の感染防護具を着用する。
  • 感染症例が使用した処置台、入院ケージ、トイレ等は、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて、確実に消毒する。

 

参考文献等

 

 

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 重症熱性血小板減少症候群における国内で利用可能な検査機関および、重症熱性血小板減少症候群が疑われる、もしくは診断された場合の注意点について記載しました。
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