レプトスピラ症
Leptospirosis
レプトスピラ症は、Leptospira interrogansなどの病原性レプトスピラにより発症する急性熱性感染症。
1886年A.Weilにより報告され1914年九州大学の稲田龍吉らが病原体を分離、1918年野口英世の提案で属名がLeptospiraに改められた。
疫学・病原体
日本では古来から秋疫(あきやみ)、用水病、七日熱などの呼称で知られている。
古くは稲の収穫期、台風や洪水後の発生が多く見られたが、現在では河川での水遊びや労働、海外旅行での感染が増えて来ている。
保菌している野生げっ歯類の尿が河川・湿地・湖などの地表水を汚染し、人や動物が経口・経皮的に感染する。ヒトの感染例の9割は男性で、日本国内の感染は夏から秋に多く、9月発症が最多で感染研の調査では全体の36%を占める。
増澤俊幸(千葉科学大学)原図
電子顕微鏡写真(国立感染症研究所 原図)
動物における本病の特徴
感染経路は主に汚染された環境水や土壌からの経口・経皮的感染。ときに保菌動物の尿が飛沫によって粘膜感染をする。
潜伏期間は動物種によって異なるが、イヌで2~20日。
症状はイヌでは発熱、貧血、黄疸、肝・腎障害など、ネコは不顕性感染のため無症状、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギでは発熱、黄疸、溶血性貧血、ブドウ膜炎など。
診断は民間の検査センターでの血清学的診断が可能。 リンク:member
イヌでの治療は輸液療法、塩酸ドパミンによる利尿、抗生物質(急性期AB-PC、回復期DOXY)などが使用される。
回復後の保菌期間は血清型と動物種によって異なり、ウシでは数週間以下、ブタは数カ月から1年以上、イヌのcanicolaに関しては数年から生涯にわたりレプトスピラ尿症を呈する事がある。
予防はイヌに対してL.canicola, icterohaemorrhagiae ワクチンが使用される。
動物における法律関係
・監視伝染病(届出伝染病):レプトスピラ症L.pomona, canicola, icterohaemorrhagiae, grippotyphosa, hardjo, autumnalis およびaustralis の7血清型(届出義務:牛・水牛・鹿・豚・いのしし・犬)
診断した獣医師は直ちに最寄りの家畜保健衛生所への届出義務が課せられている。
人における本病の特徴
感染経路は主に汚染された環境水や土壌からの経口・経皮的感染。ときに保菌動物の尿が飛沫によって粘膜感染をする。
潜伏期間はワイル病で3~14日。
症状は第1期(発熱期)39~40℃の発熱、頭痛、腰痛、腓腹筋痛、第2期(発黄期)発熱がおさまった後に黄疸、出血傾向、皮膚点状出血、血尿、血便など、第3期(回復期)激しい貧血と後発症として水晶体混濁(30~40%の症例で認められる)。
診断は血清学的診断とPCR法による遺伝子検査。
予防は保菌動物の尿または汚染水に触れないようにする事、ネズミの駆除。現在、日本で接種可能な4血清型のワクチンも存在する。
参考文献等
- 共通感染症ハンドブック(日本獣医師会 平成16年10月発行)P234-235 増澤俊幸(静岡県立大学・薬学部)
- 村田佳輝(千葉県開業)「レプトスピラ症の検査法、治療法」
- 平成26年度愛知県獣医師会 人獣共通感染症委員会担当セミナー抄録
- 国立感染症研究所 レプトスピラ症https://www.niid.go.jp/niid/ja/leptospirosis-m/leptospirosis-iasrtpc/6518-436t.html
- 増澤俊幸ら(千葉科学大学)「ヒトと動物のレプトスピラ感染症」共立製薬SAC145号https://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/entrance/?request=/ksvet/sac_download/donload.php%3Ffile=145/1.pdf&filename=1.pdf
- 動物検疫所 ペットの輸出入https://www.maff.go.jp/aqs/animal/index.html
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